字幅の違う文字を、並べて行末を揃える欧文ジャスティファイが、活版ではなにかと苦労だったが、コンピュータでは自動的にできるそれに一九八〇年代後半には、原稿はほとんどワープロで作られるようになっており、著者のフロッピーをそのまま生かせるフロッピー入稿が威力を発揮した。ただ、この間、活版の方も意気軒昂であり続けた。活版指定の仕事はそんなに減っていないのに、次々と活版廃止に踏み切る会社が増えていくものだから、そうした注文がN印刷をはじめ活版を存続している会社に流れ込んできたのである。「これを谷間の繁栄ゆうてな。まだまだ活版で行けるということや」「そやけど、活版をやめる会社が多いのんはどう解釈するの?」「低級品やからや。品質の悪い活版では、電算写植や手動写植とかわらへんけど、難漢字を駆使する学術書ではわれわれの活版はまだまだ必要とされているわけよ」親父に限らず、職人さんも自分たちの腕に誇りをもっていて、このまま未来永劫、活版が続いていくような口振りだった。
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